い抜き言葉とは?言葉の意味や例文、見分け方を徹底解説

い抜き言葉とは?言葉の意味や例文、見分け方を徹底解説

今回は、「い抜き言葉」について、現役Webライター・編集者が解説します。

い抜き言葉も、いくつかある日本語の乱れのひとつですが、言語は生き物ですから、変化は必然です。とはいえ、ビジネスマン全般、ひいては文章を生業とするライターなら、正しい日本語を使わなくてはなりません。

い抜き言葉の意味や見分け方を理解して、正しい日本語の使い方を身につけましょう。

目次

い抜き言葉とは?言葉の意味を解説

い抜き言葉とは、文章の中で本来「い」が入るべき場所から抜けている状態をいいます。またWikipediaでは、下記のように定義付けされています。

日本語の存在動詞「~いる」「~います」からいを抜いた言葉を「い抜き言葉」といい、改まった場面で使うのはよくないとされている。

Wikipedia「存在動詞」より引用

下記に、い抜き言葉の例文を列記しました。

例文
  • 今日A君は、休んでます→休んでます
  • まだB社に、返事をしてません→返事をしてません
  • 日中は、仕事をしてます→仕事をしてます
  • 最近は、読書してない→読書してない

会話中の言葉としてなら、い抜き言葉に違和感はありませんが、文章においてはNGです。とくにフォーマルなビジネス文書や、メディアに投稿する記事などには、ふさわしい表現ではありません。

ひらがなたった1文字が抜けるだけで、読み手に幼稚な印象をあたえるわけですから、十分に注意しましょう。

文法的には誤りだが、話し言葉なら許容されることも多い

い抜き言葉が使われた文章は文法的には誤りですが、会話ではそれほど不自然さを感じません。というより、カジュアルな印象があり、会話では広く認知され、使われているでしょう。

たとえば大学生A子とB子の下記の会話をご覧ください。

い抜き言葉の例文

A子「Bちゃん、最近きれいになったね? 彼氏できた?」
B子「残念ながら…。でも最近は、早寝早起きを心がけてるんだ」
A子「そっか、夜も早く寝てるんだね!」
B子「昔みたく、夜遅くまで読書もしてないしね〜」

修正文

A子「Bちゃん、最近きれいになったね? 彼氏できた?」
B子「残念ながら…。でも最近は、早寝早起きを心がけているんだ」
A子「そっか、夜も早く寝ているんだね!」
B子「昔みたく、夜遅くまで読書もしていないしね〜」

上記の会話では「い抜き言葉」を使ったほうがずっと自然です。よって会話においては、い抜き言葉に対して目くじらを立てる必要はありません。

また、雑誌やWebメディアの文章でも、カジュアルなトンマナの場合や会話が主体の記事の場合、い抜き言葉が使用できることもあります。とはいえメディアのレギュレーションが第一ですから、上司やクライアントに指示を仰ぎましょう。

書き言葉やビジネスシーンではNG

会話では許された「い抜き言葉」ですが、書き言葉ではそうはいきません。文章を読む行為では、音だけで聞くより、文法的な誤りが気になりやすいことが理由のひとつです。

たとえば友達同士のチャットなら指摘されることはありませんが、ビジネスメール・文書でい抜き言葉を使用すると、知性や常識を疑われかねません

あなたは以下の例のような、「い抜き文書」を無意識に使っていないでしょうか?

例文
  • いつもお世話になってます→なっていま
  • 業界の動向をチェックしてます→していま
  • 文書の暗号化はしてません→していません

ビジネス文書では、普段ため口で会話しているような親しい間柄の取引先に対しても、い抜き言葉の言い回しを使ってはいけません。

い抜き言葉が使われていてだらしない文書、あるいは文法的に正しくない文書は、会話のときよりもずっと気になるもの。文章と会話は別物ととらえ、メリハリを付けましょう。

い抜き言葉の見分け方

「い抜き言葉」と正しい言葉は、たった1文字の差ですから、ついつい見落としがち。そこで続いては、い抜き言葉のチェック方法を説明します。

ずばり、文章中で「ます」や「ません」を探し、「おります」「おりません」「おりました」に変換できるかどうかで、チェックします。もし変換できるのなら、本来いを入れなくてはいけない部分です。

下記の具体例で、チェックしましょう。

悪い例文

いつもお世話になってます。先日お問い合わせをいただいた件につき、現在、業界の状況をチェックしてます。また昨日、これまで収集した情報を添付しました。暗号化してませんので、パスワードは不要です。

  • なってます→なっております
  • チェックしてます→チェックしております
  • 暗号化してません→暗号化しておりません

上記のように、「おります」「おりません」に置き換えられますから、い抜き言葉になっていることがわかります。文章を修正してみましょう。

良い例文

いつもお世話になっています。先日お問い合わせをいただいた件につき、現在、業界の状況をチェックしています。また昨日、これまで収集した情報を添付しました。暗号化していませんので、パスワードは不要です。

い抜き言葉になりやすい箇所は、文末に位置していることが多いため、「ます」「ません」を探す際は、句読点の付近をチェックしましょう。

い抜き言葉のような乱れた日本語表現

日本語表現の乱れは、「い抜き言葉」のほかにも数多くあります。ここでは代表的な「ら抜き言葉」と「さ入れ言葉」を解説します。

ら抜き言葉

ら抜き言葉とは、本来「ら」を入れるべき箇所で、「ら」を省いて使われる言葉のこと。可能を表す「〜られる」を使うときに、「ら抜き言葉」はよく見られます。

以下が例文です。

例文
  • べれる→食べれる
  • 見れる→見れる
  • えれない→考えれない

昨今では「ら抜き言葉」に注目が集まっており、たとえばYouTubeで、本人は「ら抜き」で話しているものの、字幕には「ら入り」で表現されていることも増えてきました。逆に言えば、ら抜き言葉は文章はもちろんのこと、会話文でもNGになりつつあるということです。

さ入れ言葉

さ入れ言葉とは、不要な「さ」を入れた表現です。

使役を表す助動詞「せる」「させる」を、謙譲語「いただく」と一緒に使うことにより「何かをさせていただく」という謙虚表現となります。

この「させていただく」があまりに万能なため、接客業などを中心に使用頻度が増えていますが、本来不要な箇所に「さ」を入れて使っているケースが散見されます。

例文
  • (カラオケで)次、歌わさせていただきます→歌わせていただく
  • (荷物を玄関先に)置かさせていただきます→置かせていただく

そもそも「させていただく」を「いたします」の意味で使うこと自体、批判的な意見も増えてきました。汎用的な表現ですから、つい使いたくなりますが、本当に「させていただく」を使う必要があるのか?と自問することをおすすめします。

まとめ

今回「い抜き言葉」を説明しました。い抜き言葉とは、本来入れるべき場所に「い」がすっぽ抜けている表現のこと。会話では一般的とされているものの、文法的にもい抜き言葉はNGです。

冒頭にも述べましたが、言語は生き物で、変化するのは当然です。しかしその時代における正しい日本語を使うことは、ビジネスマンとしては心がけなくてはなりません。

当記事で紹介した見分け方を参考に、知性的な文章を書いていきましょう。

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