ですます調で体言止めを使ってもいいの?
「ですます」ばかりで読みにくい文章になってしまう
語尾のレパートリーを増やしたい…!
本記事は、上記の疑問を持っている方へ向けた記事です。
結論、ですます調で体言止めを使うのは、何ら問題はありません。体言止めはですます調、だである調のどちらでも使える、汎用性の高い表現です。
しかし体言止めの使い方を誤ると、読みづらい文章になることも…。
そこで本記事では、現役ライター・編集者がですます調で体言止めを使うメリット・デメリット、体言止めの使い方を、例文を交えながらわかりやすく解説します。
ですます調で使える体言止め以外の文末表現もまとめていますから、文章にメリハリを付ける方法をチェックしてみてください。
混在OK!ですます調で体言止めを使って文章にメリハリをつけよう!
ですます調で体言止めを使用しても、問題ありません。体言止めはですます調、だである調のどちらでも使える表現であるため、ですます調と混在していてもOKです。
体言止めを使うことで、単調になりがちなですます調の文章にリズムが生まれるため、積極的に取り入れましょう。
ではですます調に体言止めを加えるメリットを確認するため、「ですます」だけの文章と体言止めを交えた文章を比較します。
私は犬が好きです。犬の魅力はつぶらな目です。疲れたときには犬がいやしてくれます。犬を見ているとおだやかな気持ちになれます。
語尾がですますのみだと、読書感想文のような幼稚な印象を受けるはず。リズム感も悪く、読みにくさも感じることでしょう。
では上記の文章に、体言止めを使って書き換えてみます。
私は犬が好きです。犬の魅力はつぶらな目。疲れたときには犬がいやしてくれます。犬を見ているとおだやかな気持ちになれます。
それぞれの文章の違いは体言止めの有無のみですが、テンポがよくなり、読みやすくなりますよね。体言止めは強調の意味合いも含む表現のため、強調したいのはつぶらな目であることもわかり、文章にアクセントがきいています。
キャッチコピーに体言止めがよく使われるのも、読み手の印象に残しやすいからです。体言止めをうまく使い、読み手の心に刺さる文章を綴っていきましょう。
体言止めが禁止されることもある?
万能な表現にも思える体言止めですが、実はメディアによっては体言止めが禁止されることもあります。体言止めが避けられるのは、下記のデメリットがあるからです。
- 高圧的な印象をあたえる
- 余韻が生まれるため意味が誤解されることがある
- 主張がふわっとする
- 使いすぎると文章がぶつ切れになりリズムが崩れる
とくに柔らかい印象の強いですます調で体言止めが使われると、いきなり冷たい印象の文章になり、違和感の原因になることも。また体言止めは余韻を残す表現でもあるため、ですます調ではより言い切りが求められる場合もあります。
以上のデメリットから、体言止めはビジネス文書や論文との相性がよくありません。メディアで執筆する場合も事前にレギュレーションをチェックし、体言止めが禁止されていないか確認しましょう。
使い方には注意!適度に取り入れるのがおすすめ
ですます調での体言止めの使用は、メリット・デメリットがあります。そのため体言止めは、程よく取り入れるのがおすすめです。
体言止めを程よく使うことでリズムが生まれ、単調になりやすいですます調の文章にメリハリが生まれます。しかし体言止めを何度も連続すると文章がぶつ切れになって、逆に読みづらくなることも。
では実際に体言止めを過剰に使った文章と、適度に体言止めを使った文章を読み比べてみましょう。
今日の夜ご飯はカレー。わが家のカレーはスパイスが自慢。くせになるピリッとした味わい。毎日食べても飽きない美味しさ。
今日の夜はカレーを食べました。わが家のカレーはスパイスが自慢。ピリッとした味わいがくせになります。毎日食べても飽きないくらい美味しいんです。
体言止めばかりだと、ぶつぶつ途切れてしまってぶっきらぼうな印象を受けますよね。体言止めが2回連続しただけでも、読み手は違和感を覚えてしまいます。リズムを生むのに便利だからといって、体言止めを使いすぎないように注意してください。
歯切れよい文章にするためにも、1段落に1回使うのを目安に体言止めを取り入れましょう。
体言止め以外の文末表現は?ですます調で使える語尾5選
続いては、ですます調で使える体言止め以外の文末表現を紹介します。
読みやすい文章を書くためには、語尾のレパートリーは多いに越したことはありません。語尾が適度に散っていることで文章にリズムが生まれ、読みやすくなるからです。
とはいえですます調と体言止めだけでは、どうしても語尾が重複してしまいますよね。文章力をワンランク高めるためにも、下記の語尾を取り入れてみてください。
- 〜でした、ました|過去形
- 〜でしょう、はず|推量
- 〜ません|禁止、否定
- 〜ください、ましょう|命令、勧誘
- 〜よ、よね|呼びかけ、念押し
それぞれの語尾の使い方を、例文付きで解説します。あわせて注意点も紹介していますから、ぜひ参考にしてください。
〜でした、ました|過去、完了
〜でした、ましたは、過去の動作や状態を表現するときに使います。今〜をしたのような、完了も表せる表現です。
- 文章を書きました。
- 文章を書いていました。
- 文章を書き終わりました。
過去の状態を表すときはもちろん、「調査によると〜だとわかった」と事実を表すときにも使える便利な表現です。
「今は野球をした」のような時制が混ざった表現は、読み手の混乱を招くため注意しましょう。現在は現在形、過去は過去形で表すと、読み手に誤解なく伝わる文章になりますよ。
文章が長くなるにつれ時制がずれてしまいがちですから、注意しましょう。
〜でしょう、はず|推量
〜でしょう、はずは、推量を表現する語尾です。
- 文章を書くでしょう。
- 文章を書くはず。
- 文章を書くようです。
未来のことを推測する場合や、断言できないことを述べるときに役立ちます。「〜です、ます」よりも主張は弱くなりますが、自分の意見をまとめるときにも使えますよ。
推量を使いすぎると、伝えたいことがあいまいになります。説得力のない文章にならないよう、使いどころには気をつけましょう。
〜ません|禁止、否定
「〜ません」は、禁止や否定の意味をもちます。
- 文章を書きません。
- 文章を書いてはいけません。
否定の文章が続くと、読み手の印象がマイナスになってしまいます。強調したいポイントで使うと、文章の流れを変えられるため、ここぞという時に使ってみてください。
少し特殊ですが「泳がないはずがありません」のように肯定として使うこともできます。このような二重否定は、否定なのか肯定なのか、読み手が一瞬考えなければならない複雑な表現ですから、多用は避けましょう。
〜ください、ましょう|命令、勧誘
「〜ください、ましょう」は、命令や勧誘を表します。
- 文章を書いてください。
- 文章を書きましょう。
何かを勧めるときや読者に行動を促したいときに役立つため、段落の最後に使うのがおすすめ。
「〜ください」は、読者に対しすこし威圧的な印象を与えてしまうため、メディアのトンマナや文章の流れを配慮する必要があります。表現を柔らかくしたい場合は、「読書がおすすめです」「読書してみてください」と言い換えてみましょう。
〜よ、よね|呼びかけ、念押し
「〜よ、よね」は、呼びかけや念押しとして使います。共感を呼びかけることでやわらかな印象になり、親しみやすい文章に近づきます。
- いい文章を書けますよ。
- 文章を書きますよね。
「〜よ、よね」は、読み手が納得できる文脈で使うことが重要。たとえば甘いものが嫌いな人に「甘いものはおいしいですよね」と伝えても、共感してもらえないはず。
想定読者を想像して、読み手がつい「うんうん」とうなずきたくなるように問いかけるのがコツです。
ですます調と体言止めで、文章の印象はガラッと変わる
メディアの編集業務で読みにくいと感じる文章をつぶさに分析すると、ですますのみが使われていることがほとんど。文末表現が連続していると、読み手は飽きてしまい、文章を最後まで読みたくなくなります。
そのため読者が飽きてしまわないように、適度に語尾を散らすことが大切です。
ほんのちょっとの工夫ですが、語尾を変えるだけで文章全体のクオリティがあがります。文章を書き終わったときには、同じ語尾が3回以上続いていないか見直してみてください。
体言止めの他にも、今回紹介した語尾を取り入れて、続きを読みたくなる文章を目指しましょう。